今回は澤野新一朗さんにお願いいたします。澤野さんへのインタビューはこれから隔週で3回に渡って掲載されます。

澤野 新一朗(さわの しんいちろう)
写真家・南アフリカ共和国観光大使
プロフィール・活動:
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—— 今日は澤野さんに「共育者」の観点からまず普段どんなことをされていらっしゃるか伺えますか?
澤野:肩書きは写真家・フォトグラファーです。主に自然を撮影していますが、人物を撮影したりオールラウンドに撮影しています。もともと大学では写真学科でジャーナリズム専攻でした。ですから卒業してすぐ報道の方に携わりました。けれども、日本でメディア業界に働いてジャーナリズムの限界を感じてしまいました。白けちゃったのです。
ひとつは、上の権力に対して制限されることを実感したのです。ある出版社で写真部門にいて、外部からスクープをしてくれないかと言われた時に、写真部長に相談したら、「それは社内のトップが繋がっているからできない」と言われたのです。ジャーナリズムというと正義心の中で悪を暴くというか、メディアというのはそういうものかと思っていたのですが、必ずしもそうでないと感じたのです。
それと、オフタイムの時に街中を見ていても、何かここで事件や事故が起きないだろうかというように無意識のうちに世の中を見てしまう、そういうのに嫌気がさしたというのがあります。
—— それは何年位経った時でしたか?
澤野:半年で辞めました。そういうことがありまして、その後フリーでいろいろ仕事をやりながら、JICA国際協力機構のプロジェクトでアフリカ南部のマラウィという国の政府観光局に写真部門を設立する仕事のために2年間滞在しました。それが僕のこれから出てくるアフリカの最初のきっかけになったのです。
—— アフリカにそこから縁ができて、そして今に。
澤野:今、ライフワークとして撮影しながら発表しているのが、地球上で最大と言われる野生植物の宝庫、場所は南アフリカ共和国のケープ地方、西ケープ、北ケープですね。そこの花園に出遭って、そこのエネルギーを伝えるというのがライフワークのテーマです。
—— この世とは思えないようなお花畑、拝見しました。
澤野:今から22年前の1996年に僕がその場所を日本で最初に紹介しました。アフリカに初めて行ったのはもっと前、30年以上前です。グラフ雑誌とかTVに出演したり、講演会をやったりしていると、日本人はお花が好きですので「是非行きたい」「どうしたら行けるのですか」とか「ツアーを組んでくれませんか」というリクエストがかなりありまして、2年後の1998年に初めて日本からその花園を訪れるツアーをオーガナイズしました。
以来昨年まで、今年も催行しますが、通算で22回位、ほとんど毎年やっています。だいたい10〜15人位お連れしています。初回の1998年から感じていたのですけれども、訪れた人がみんな子どもに還ったようにワクワク元気になってしまう。若返ってしまうのです。
—— わー、すごい!私も行きたい。
澤野:地平線まで咲き広がる花園に出遭って歩いたりすることもありますし、夜空の星の素晴らしさとか、アフリカの大地の持つエネルギーとか、それから意外にも食べるものがすごく美味しいのですよ。そういうことをからだで味わってしまうと、都会の人たちが持っているストレスとかこころの病とかが全部アースされるような、そういう場だと信じています。
僕は写真が仕事ですので、写真としてこの日本に帰国して伝える、例えば印刷物にしたり、写真展として発表したり、あるいは今だとインターネットとか、そういった伝え方を最初は思いました。ところが現地は、自然音がすごいのです。花園には鳥の鳴き声とか夕方になるとカエルが鳴いたり川の流れとか、そういう自然界の音も持って帰ってきたいと思いつきました。

—— CDを出してらっしゃいますね。
澤野:それは20年位前からなのですが、あるサウンドクリエイターと出会って相談したのです。「いい音を録りたいというよりも現地の気配を録りたい」と言ったら、「澤野さん、とっておきの機械がありますよ」と。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、昔はカセットテープの次の世代のものとしてプロ用の録音機器として使われていたDAT (Digital Audio Tape)というものでした。なぜそれを使うかと言うと、コンパクトディスクCDよりも音域が広かったのです。それをお借りしてサウンドを録ってきてCDを作り始めて今に至っています。
今はDSDフォーマットという録音形式がありハイレゾというのが流行(はや)りになっていますけれども、DSDフォーマットは人間の可聴域を遥かに超えた音まで収録できるので、その録音機を使って収録して、それを編集してCDとして販売しています。
コンパクトディスクはソニーとオランダ・フィリップス社が共同開発したのですが、人間の耳は上の音は22キロヘルツ以上、下の音は20ヘルツ以下は聞こえないだろうとしてカットしているのです。その理論に基づいてコンパクトディスクという形のCD1枚に収めてしまっている。厳密には、確かに大人の耳では14,000ヘルツを超えるとヘッドホンでも殆ど聞こえないのです。小さい子どもでも17,000ヘルツ、それ以上聴こえ難いのです。ところがどうも人は5万ヘルツ位まで感じているのではないかと言われているのです。
—— 耳で聞くのではなく、感じているのですね。
澤野:医学的に、例えば光とか色とか音は、耳や目だけでなくて、この皮膚というものが感じ取っていると説明できていますね。そういう意味で、音も耳で聞くのでなくバイブレーションとして体が感じているのではないかと思います。実は、日本オーディオ協会のメンバーになりましたので、音の専門家とこれから交流する予定です。
なぜハイレゾが今話題になっているかと言うと、ヘッドホンでもスピーカーでも5万ヘルツ、良い物では10万ヘルツ位まで再生できるスピーカーがありますが、同じ音を聞かせてもコンパクトディスクの音とハイレゾの音では音の厚みが違うのです。メッシュの細かさ、それが聞き比べると明らかに違うのです。例えば、スマホとかYouTubeとか、AppleでiTunesで配信しているのはMP3というコンパクトディスクよりももっと圧縮しているものです。そういう音・音楽とハイレゾを聴き比べると明らかに違います。MP3の音は平べったい感じです。それがハイレゾで聴くと、何とも言えない立体感と奥行き感、そういうのが出てきます。
もうひとつ、写真として僕の名刺にも使っているのですが、「ピンホール」という特殊な撮り方をしています。レンズを使わずに写真を撮るという昔の針穴写真です。
なぜそんなことをやるかと言うと、ピンホールに関心を持って撮り始めて15年以上経つのですが、カメラのレンズというのはほとんどがガラスでできています。今のデジタルカメラではカラーバランスという機能があるのですが、それはイメージセンサーでキャッチしたデータを人間の見た目、可視光線に近づけるように処理しているのです。ところが、フィルムであろうと今のイメージセンサーであっても可視光線よりもはるかに広い波長域まで実は感じているのです。赤外線とか紫外線とか。人間が見えている範囲はすごく狭いのでわざわざ人間の目には見えない光は全部省いているのです。ところが、今言ったピンホールというのは極小さな穴ですので、外界の光や太陽の光の成分を直接イメージセンサーに届けているのです。
—— 選別していないのですね。
澤野:はい。そうやってできる限りフィルムなりイメージセンサーが取り込める色域というか波長域、それも取り入れたいと、できればそれを再生したいという願いがあります。
—— 今までだったら役に立たないと切り捨てられていた部分に、何かあるということなのですね。
澤野:そうなのです。ちょっと話が前後しますが、僕は大学生の時にある女性経営者とお会いしたことがありました。カトリックの信者の方で、彼女と会った時に何を勉強しているか聞かれて、写真を勉強していることを伝えたところ、「写真を勉強しているのだったら、目に見えないものを写すように勉強したら?!」と言われた訳です。「えっ?!」と言ったら「『星の王子さま』読んだことある?」と聞かれ、「読んだことない」と言ったら、「ぜひ読んでごらんなさい。星の王子さまも言っているじゃない、一番大切なものは目に見えないって」と。聖書の中にもあるんですよね。それが僕の今に至る写真に対する考え方の通奏低音としてあります。目に見えないものを写す。本当に重要なもの真実は目に見えない。それが根底にあるのです。
—— すごい含蓄があります。
澤野:だから音もそうです。人間が知っている感じている領域って非常に狭いということがわかったのです。
もうひとつがフラワーエッセンス、またはフラワーレメディとも言いますけど、それはアロマセラピーのように花の香りを利用してお部屋に焚いたりオイルに混ぜてマッサージするとかリラクゼーションに使うものとは別のものです。
最初に出会ったのは22、3年前、まだアロマセラピーという言葉も一般に皆さん知らない頃でした。たまたま世田谷のオーガニックの店にエッセンシャルオイルと一緒にエドワード・バッチ博士のフラワーレメディが置いてありました。翻訳されたバッチ博士の本も売っていたので読んでみて、こういうこともあり得るだろうなと自分の中で思っていました。
1996年、当時5歳と3歳の二人の息子も連れて家族で南アフリカに行きました。それでケープタウンのナチュラルショップに行ったところ、南アフリカ製のフラワーエッッセンスが100種類以上あったのです。
—— その当時から?
澤野:はい。バッチ博士のフラワーレメディの説明を少ししますと、医師であるエドワード・バッチ博士が実際生きていた時代は第二次世界大戦前1930年代で、現代風にフラワーエッセンスを体系化したのはバッチ博士と言われています。今では世界中、オーストラリア、ヒマラヤ、アラスカとか北米、南米、日本でもフラワーエッセンスとして何千種類と作られています。
そういう中で、南アフリカにもサウス・アフリカン・フラワー・アンド・ジェム・エッセンス(The South African Flower & Gem Essences)と言うブランドがすでにありました。
—— ジェム、宝石・石を使ったものですね。
澤野:はい。そこのプロデューサーの女性に連絡を取って会いに行ったところ、彼女は、僕が撮影している北ケープ州の通称ナマクアランドで野生の花からエッセンスを採ったことはないという話でした。
話は最初に戻りますが、僕が訪れている場所を地球上最大の花園と言いましたが、4.000
種類以上もの花が一度に咲くと言われています。
—— すごいですね。
澤野:どんな花々かと言うと、日本でも親しんでいるマーガレット、ディジー、グラジオラス、フリージア、ガザニア、カタバミ、アイリスとか、それから花ではないですけど百数十種類のアロエがあります。一般的に、アロエベラ、キザチアロエとかが日本では知られていますが、その他の多肉植物の宝庫でもあります。
1996年から毎年欠かさず現地に行っていますが毎年花の表情が違います。
—— お花の種類は同じでも表情が違う。
澤野:そうです。日本では、お花畑と言うと北海道の美瑛とか富良野とかフラワーワールドのようなイメージがありますが、ほとんどの場所は人間が管理・世話しています。でも南アフリカの花園の場合は、その年の雨・気温しだいなので、同じ場所に毎年立ってもお花のグラデーションが違っています。
—— その年に合ったものが野生で毎年出て来るのですね。
澤野:そうです。二度と同じ風景が見られないのです。そこで『神々の花園』という商標を取って名づけています。
—— お写真を拝見しても、とても神々しいです。
澤野:まるで「幻の花園」のようで、年によって自分の開花条件が来るまでじっと寝ているのです。タイムカプセルのように。
—— すごいですね。毎年咲かなくても自分の時が来たらわかってぱっと出てくるのですね。
澤野:非常に密集しているから自然交配が激しいのです。絶滅危惧種として登録され地球上でここにしか生息していない植物もあれば、未だに全ての植物を網羅している図鑑がない。また、世界中で普及している園芸品種のルーツでもあるのです。もちろん花園に入れることもありますが、普段日本人が想像している規模より遥かに広いんです。そして、その花の多くが皆さんが親しんでいる園芸植物のルーツでもあるんです。
—— そういうところから持ってきたものが今私たちが花屋で買っているお花だったりするのですね。
澤野:そうです。品種改良したりしてね。
—— だから『神々の』なんですね。それこそ神様が創った一番のおおもと。
澤野:そういうおとぎ話があるのです。昔々、天使が腰に種が入った袋をぶら下げて空を飛んでいました。いつのまにかに袋に穴が空いて種はこぼれこぼれて、荒野が花園になりました、と。
—— 素敵ですね。
澤野:それで話を戻しますが、フラワーエッセンスを実際に花園の中で作って徐々に日本に持って帰ってきました。
—— バッチさんからのヒントを得て、澤野さんはそこでエッセンスを採ろうというお考えになったのですね。
澤野:そうです。バッチフラワーレメディの場合は普通、サンメソッド法と言って、一番太陽光線が強い時に綺麗なガラスの器とかクリスタルのボールにミネラルウォーターを満たして花を摘んで浮かします。それを光に当てて、花を捨て、そこに保存液としてブランデーを入れて、マザーエッセンス(母液)を作ります。だけれども、このナマクアランドには貴重なお花、レッドデータと言いますが、いわゆる絶滅危惧種に登録されている植物種もあるわけです。できるだけ花を摘みたくなかった。それで、花弁の中に水が入るタイプの花でしたら、持ってきたミネラルウォーターを一輪一輪の花弁の中に入れて、しばらく置いて、「ありがとう」と言ってその水をまた集めて作ったのが僕のマザーエッセンスです。
—— まさに『神々の花園』のエッセンスが凝縮されているイメージが湧いてきます。次回『神々の花園』のエッセンスをどのように伝えていらっしゃるのかを伺うのが楽しみです。
(インタビュアー・長岡 純)

【イベント情報】
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