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共育者に聴く

21世紀共育ラボでは、

共に育つということを実践されている方を「共育者」と呼び、

​その実践内容をインタビューさせていただくことにしています。

永井洋子さんインタビューvol.1

今回は、フラワーアーティストであり、愛知県岡崎市でフラワーデザインスクール「アトリエ ヨーコ」を主宰されている永井洋子さんにお願いいたします。

インタビューはこれから隔週で3回に渡って連載されます。



永井洋子(ながいようこ)

池坊正教授一級

フラワーデザイナー一級

フラワー装飾技能士一級

NFD講師

https://atelieryoko.net/index.html






—— 今日は永井洋子さんをお迎えしています。永井さんは横浜で開かれた「国際平和美術展」のために上京されました。昨秋、同じ作品がウィーンでも展示されたそうです。早速お話を伺っていきたいと思いますが、永井さんがお花を始められたきっかけを教えていただけますか?


永井:はい。7つ違いの姉がいるんですけれども、お花のお稽古だったりお茶のお稽古だったり、近所の先生のところに行っていまして、私はもう姉が羨ましくて。母に「私も一緒に行きたいんだけど」って言ったら「あぁ、ちょっとまだ早いから中学になってからね」と言われまして。あら残念(笑)と思いながら、中学2年生から池坊に通いました。優しい先生で、行くのが楽しくて楽しくて。お花を1回活けて帰ってきますよね、家だとまた飾る場所によって「ちょっと変えなきゃなぁ」と活け直すから2度3度勉強ができる。ほんとに毎回楽しくって。そこが生け花の始まりです。


—— そうだったんですね。今はお教室を開いていらして、大勢の生徒さんに教えたり、国際的な展覧会、作品展、美術展に出展されて、賞をお取りになったり、外国でも活躍されるようになっていらっしゃいますね。


永井:はい、偶然のいきさつが色々ありまして、そういう結果なんですけれど。


—— のちにフラワーアレンジの方に進んでいかれたきっかけは何だったんですか?


永井:池坊の大学にも行きたいと思ったくらい、お花が好きだったのですが、女の子だし家から離れちゃダメと言われまして、京都には行けない。でもずっと池坊を勉強しながら、普通に OL してましたけれども、結婚してからですね。池坊の作品展に出すたびに、何センチの場所に飾って下さいって言われます。それが私としてはなんだかつまらなくって、もっと広い、大きなものを私は自由に活けたいと思うのに、例えば50センチと言われたら、隣の人とぶつかっちゃいけないから40センチぐらいのものを作らなくちゃいけない。いつもがっかりするわけですよ。先生の言う通りには活けたくないし自分の好きなように活けたいわけです。池坊が嫌いなわけじゃないけれど、もっと自由に活けられるものはないかなー?て考えた時に、フラワーアレンジに出会い、いったいどこで勉強すればいいのかなぁとお花屋さんに聞きに行ったら、「あそこに良い先生がいらっしゃいますよ」と言うので、じゃあ、と思ってお伺いして、CBC (中部日本放送) のアナウンサーをされていた先生のところで習い始めました。


—— 華道の池坊と、次に出会ったフラワーアレンジですけれど、何がどう違うのかちょっと簡単にお聞かせいただけますか。


永井:あぁ、そうですね。池坊というのはもともと仏花から始まっています。お寺のお供えするお花だったり、床の間飾りだったり、日本家屋に合うお花。壁があってその前にお花を置きますから後ろから見ることはないですね。だから三方見、正面か右か左か三方見となります。でも、アレンジの場合はテーブルの真ん中に飾ってありオールラウンドだったりします。


—— そうなんですね。それまで池坊でお花を活けていて、アレンジと出会った時どんな感じだったんですか?


永井:思ったものとまた違うって感じですね。というのはコサージュを作ったりとか、形を作ったり、丸や三角を作ったり、基礎はやらなくちゃいけないですけれども、私って意外に不器用だなってそこで気付くわけですよ(笑)。

最初の頃、なんでこんなに指が動かないんだろうと思って、器用だと思ってたのに不器用でした(笑)。そんなことで基礎をしっかりとやったおかげで今があるんですけど。


—— あーそこでしっかりと基礎固めされたんですね。


永井:そう。だからうちの教室は、やりたいもの、言ってください。なんでもお教えできますし、対応できます。


—— 今、岡崎のお教室に、お弟子さんは何人ぐらいいらっしゃるんですか?


永井:今現在来ている方で50人。


—— どんなお教室なんでしょうか。


永井: そうですね、いつも柔らかーい気持ちっていうのか、ゴムまりのような柔らかさで型にはまることなく自由にのびのびと作品を活けるなり作ってほしいなぁって、それがアトリエ ヨーコの想い、願いですが、一応勉強、基礎はやります。基礎をちゃんとやっていると、きちっと美しく見えるんですよ。焦点というものが一つ花にはあって、そこに向かって挿すというのが基本にあるんですね。そういうのを守っているとどんな風にやったとしても美しく見える。だから基礎は大事。けれども、そこに囚われてはだめですよって。自分がこうやりたいと思ったことはやったほうがいい。人と同じことをやっていても新しいものは生まれない。世界に一つという作品は、誰もやったことがないから、魅力もある。


—— なるほど。型を破って自分なりのオリジナルな世界へと広がりたい人もいるでしょうけれども…


永井:ほとんどの人はそうじゃないですよ。どうやって活けるんですか?って細かく細かく丁寧に丁寧に基本を教えないと、「やれません」て言われるような人ばかりですね。


—— まずは先生の作ったものを見たい。


永井:そして真似したい。だから一切私は見本を作らないです。


—— あ、作らないんですか!


永井:作らないです(笑)。ごめんなさい(笑)。


—— じゃあお花だけ置いて、各自好きなように活けてみましょうと?


永井:楽しくアレンジっていうのが中心なんですけれど、例えば行事がある月には、その行事はこういうことでってお話はします。


—— なるほど。目的にあったものっていうことですね。


永井:そうですそうです。今日のお花はこれですよって置いといて、皆さん、見て感じたままに何か作ってねって。


—— そうするとどんな仕上がりを目指すかはその人の中にしかないわけですね。


永井:で、その時に「先生、なんかわかりません」って言った方には「お花に聴きなさい」って言う(笑)。


—— お花に聴く⁈


永井:お花に聴きなさい、枝に聴きなさいって。枝がいくつか置いてあり、名前は同じだけれども姿は違うじゃないですか?こうなっている枝があればこうなっている枝も(笑)。だからその個性を見なさいって言います。で、一番その枝が輝くように活ければ、自然と美しくまとまってきます。


——だとしたら、お花を活けるっていうのは、何かこの内面的というか、そういう深みにその人が踏み込んでいく作業とも言えるのでしょうか…


永井:まあそれは人それぞれなんですけど。そうなる方はそうなるし、私がそうしなさいというわけではないんです。お花って不思議なことに、オアシスに挿していくと短い時間で完成するんですよ。「あ、今日もこんなに素敵にできたわ!」って。楽しいじゃないですか。ね?それで十分なんです、ほんと。


—— なるほど!お花を活ける目的は、そこら辺にある。


永井:あるんです。だから、年取った方や子どもたちにすっごいオススメなんです。「まあステキ!」と、みんなが褒めておうちも明るくなって楽しくなる。


—— そうですね。ところが何か正しいもの、お手本を真似て作っていると、その満足感を味わえない気がしますね。


永井:満足度が、先生と同じにできたから、で終わっちゃうじゃないですか。だけど自分で挿して置いていたら「私の作品」になるでしょう。


—— そうですよね。なんかそのすっきり感ていうか、胸がすっと、満足する感じがします。ところで池坊からフラワーアレンジに出会い、そこから今のようにフラワーアーティストになられて、何か変わったことはありますか?


永井:出会いがあったんですね。カラーセラピストの上村渉さん。お花を教えるにあたって、色の勉強をもっとしたいなと思った時期がありまして、ある女性に「私、カラーコーディネートの勉強をしたい。何と何を合わせたらいいだろうとか、そういうのを勉強したいんだけどどなたか先生知りませんか?」とお聞きしたら、「いい人がいるからお教えしますね」って。楽しみにお会いしたら、カラーコーディネーターじゃなくてカラーセラピスト、しかも男性だった。でもせっかく待ち合わせ場所に来て下さっている以上、お話聞かなきゃと思い、聞き始めたら、本当に大事なことだったんですね。カラーコーディネートって、肌に合う色とか表面的な感じですけど、カラーセラピーっていうのは本来大事なものを色で表す、色の本質の勉強でした。そこで上村先生についてしっかりカラーセラピーの勉強もしたんです。


—— あー、色とは何かみたいなことですね。


永井:そうしたらもう本当に深くて、それこそ古い古い昔は、色で治療もしていた。家の傍にあるお花に癒されて育っていく全ての人々。そんなことを色を通してお勉強しました。例えば暑いところに咲いてるお花は濃い色、寒いところでは薄い色だったりとか、自然の摂理でそうなっていて、そこに必要なものが咲いている。それは人間だけのためというのではないですけれど、地球上の動きですよね。そういうことを、あぁなるほどなーって気づかされたんです。


(インタビュアー・長岡 純)



Merry Christmas ❣


 

(インタビューのあとで) 永井さんの作品を拝見していると、どれも美しい。美しいけれど見て見てと自己主張してこない。でも自然とこちらの懐に入ってくる、僭越ですがそんな印象を受けます。その美しさに無理がなく自然と融合している印象を受けるのは、色とは何か?といった広く深い視野がその背景にあるからかもしれない、お話を伺ってそんな気がしました。次回もお楽しみに。

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