今回は、山口雅子さんにお願いいたします。
インタビューはこれから隔週で3回に渡って連載されます。
1回目は、砂浴について語っていただきました。

山口雅子(やまぐちまさこ)
岩手県宮古市出身、浜松市在住。ライター、環境と食のアドバイザー、ヒプノセラピスト。中医薬膳指導員、静岡県環境学習指導員。浜松市環境学習指導者。防災士。ふじのくに防災士。 著書/『そばをもう一枚』(静岡新聞社)、『静岡・山梨のうまい蕎麦83選』(幹書房)
ブログ「ヒプノセラピー&健康講座」 https://kenkokoza.hamazo.tv/
—— 山口雅子さんは静岡県浜松市にお住まいで、執筆家としての本業の他にたくさんの引き出しをお持ちで多彩な活動をされています。まずは、雅子さんが幹事をされて毎年夏になさっている砂浴のことから伺っていきたいと思います。
山口:砂浴はもともと民間療法で、砂とか土に埋まって毒を取るということが全国各地でなされていたようです。江戸時代にも、例えば、ふぐにあたった人を、土を掘ってその中に埋めると毒が抜けてその人が助かるということが行われていました。
東城百合子さんという自然療法の大家の『自然療法』という本の中に砂浴・砂療法について書いてあります。私はそれを参考にして料理の仲間達と始めたのが最初で、もう20年近くなると思います。
—— その本を読まれて砂浴をなさるようになったいきさつを伺ってもよろしいですか?
山口:私は、子宮筋腫で子宮も取っているのですが、アメリカにいた2000年に乳癌になりました。当時、元阪神タイガースの捕手をしていらしたHさんとお会いした際にご本人がおっしゃったことですが、病院に行ったら「もう何も助かる方法はない。手術もできないしあと半年で亡くなる」と余命宣告されたのだそうです。彼は砂浴のことを何かで知り、カリフォルニアは目の前が海なので、すぐに始めたのです。
すると、警察官がやって来て「ここで何をしているのだ?」と聞かれて、「病気を治すためにやっているのだ」と伝えると、その警察官は「実は自分も体の具合が悪い」と言って翌日から一緒にやるようになったそうです。それを毎日毎日やっていたら、半年経っても死なない。おかしいなというのも変ですけど、全然体調も悪くならない。病院に行ったら先生に「なんだ、お前まだ生きていたのか」と言われて、結局癌が治ったというのです。それをご本人から直接聞いたので、記憶に残っていました。
やり方は、まず穴を掘ります。そこに埋まります。もっと細かく言うと、体の収まり具合とか脚の開き具合とかあるのですが、とにかく心地いい体勢にして、体に砂をかけていきます。首のあたりまで埋まるのですが、重くなるほど沢山はかけません。

—— 顔は出ているのですね?
山口:はい。直接日光には当たらない方が良いのでパラソル、傘などを使い、日除けを万全にします。人によってはサングラスをかけたり、手拭い一枚顔に覆ったりして、大体、私たちは朝7時とか7時半から始めてお昼くらいまで行います。
—— 特別な砂のある場所とか、砂浜には条件があるのでしょうか?
山口:もちろん綺麗に越したことはないのです。浄化するためにはその砂が汚いと良くない訳です。そこで、毎年調べて放射性物質の調査結果も出しています。ゴミ処理場のあるような所とか、サーファーや海水浴の人が多く来るような所は避けるように良い環境の所でやっています。聞いた話によると、猪苗代湖がものすごくいい場所らしいです。
—— 淡水でもいいのですね?
山口:はい、淡水でもいいです。ただそこでやっていた人たちは3.11以降どこかほかでということで、猪苗代湖と共にいい場所と言われていた遠州灘に流れて来ました。遠州灘の何がいいのかは分かりません。磁場がいいのか、気の流れがいいのか分からないけれども、いい場所と言われているそうです。
—— そうなんですか。どんなものを着て入るのですか?
山口:なるべく裸に近い方が良いので、男の人だったらふんどし一丁。女の人はそうはいかないのですが、水着、化繊はダメ。私はぶかぶかのランニングシャツみたいなものに、綿でゆるゆるのショートパンツみたいなものをはいて入っています。もちろん裸に越したことはありません。砂浴を始めると体の状態がいろいろ変わりますが、私は最初2年ほどとてもきつかったですね。
—— 体にきつさがあるのですか?
山口:そう。健康な人は気持ちよく寝るんです。でも私の場合は、全身に痛みが走ったり、部分的に痒くなったり、それがあちこちに動いていく感じなのです。ヒプノセラピーでインナードクターという言い方がありますが、本当に自分の中にそういうドクターがいて、あちこち探してくれている感じ。
—— 悪い部分というか、治す部分をですね?
山口:そうです。あと私は、やっぱり海がいいなと思うのは、目を閉じると波の音がする。湖や池って止まっているけど、それとは違って波が寄せては行く海は、浄化されている感じがするのです。
—— 自分に波はかからないのですか?
山口:波がかからない安全な所でやります。目を閉じると自分も砂になった感じ、粒々になった感じがするのです。いつの間にか体がなくなって、目を閉じていると、本当にだんだん地球と一体化する感覚になります。
—— 地球と一体化するというのはどんな感じなのですか?
山口:すごく気持ちいいのです。皆さん感じ方が違うかもしれないけど、私は粒々、素粒子とよく言いますが、そこにある物体も自分も全て本当は同じ。たいして変わらない。全部粒々という感じを実感します。
—— 雅子さんは、ご自身が砂に埋まった1回目にそんな感じを経験されたのですか?
山口:最初はあまり心地よくなくて、眠れなくて、しかもその時にハエがたかってきたのです。砂に埋まっている私の周りにハエがいっぱい来るのです。
—— え〜。何か体から出てくるのでしょうか?
山口:そう、何か体から出ていると思うのですけど、その匂いのためなのか、ハエがいっぱい集まってくるのです。でも、年々ハエは少なくなりました。
あと、砂から出たあとの自分が着ていたものの匂いがすごい。汗とは全然違う甘酸っぱいような強烈な匂いがしました。
—— それが自分の中から出てきたものなのですね。
山口:はい。東城百合子さんの本に例が出ていますが、例えば何年も前にやめた香水の匂いや、添加物などいっぱい摂っている人の場合は科学的な匂いです。よく助産婦さんが赤ちゃんを取り上げる時に、最近のお母さんのお腹が臭いと言いますが・・・
—— シャンプーとか柔軟剤の匂いとかがすると言いますよね。
山口:そう。私も長いこといろいろな治療をしてきて、ホルモン治療もしてましたから、やっぱり溜まっていたのだと思います。
—— 体の細胞の中に。
山口:溜まっていたものが出てきたのだと思います。
—— 砂に埋まっているとすごいいっぱい汗をかきますよね。
山口:はい、かきます。海水で砂が湿っているから、ものすごく汗をかいてもサウナのような実感はないけれど、かなりかいています。指宿の砂風呂は温泉で熱いため15分くらいしか入ってられませんが、砂浴だと何時間でもいられる。体の悪い人は時間をかけてやるのが良いと言われています。
—— 気持ちが良いものなのですか?

山口:健康だと気持ちが良いのです。
—— 雅子さんは、最初は痒かったり気持ちが良くなくて眠れなかったんですよね。
山口:でも、だんだん気持ちが良くなってきて、一体感を味わえるようになると、もう瞑想に近いものもあります。
—— ずっと埋まっていて、手足も動かないからじっとしているしかないですね。
山口:寝ているんですよね。本とか読む人もいますが、できればそういうことはしない方が良くて。
—— 頭を使うようなことですか?
山口:そう。何もしないで、ボーッとしているのが一番いいです。
—— やってみたいですね。素敵。
山口:ぜひやってみて下さい。それで実際にいろいろと病気が治った人もいます。
—— 雅子さんの場合、それをされるようになってから、身体に何か変化が起きたのでしょうか?
山口:乳癌は手術と放射腺治療を受けたあと、化学療法やホルモン治療はやっていませんが全く問題ありません。肺もピンポイント照射という方法で5日間の治療だけ行い、あとは何もしていませんし薬も飲んでないです。右の卵巣嚢腫があったのですが、それは自然退縮しました。多分砂浴と食事療法のおかげだと思います。
—— 先ほどお話しくださった地球と一体化する感覚。それが起きた時に、体の中で何か変化が起きるような感覚ってあるのですか?
山口:砂浴をやろうと思う人は、薬などに頼らないで自分の自然治癒力や免疫力を高めたいという気持ちのある人だと思うのです。自分の力だけではなく、自然には治癒力を引き出す力があると思っている気がします。
—— もともとそういう方向性の考えを持っている方ということなのですね。
山口:はい。というのがひとつと、本当に砂に力があるということが言われていて、例えば電磁波とか溜まっているものを外に出す、そういうアーシング的なことも最近言われています。あとは、気持ちをリラックスすること。粒々になった時に、自分を全て委ね、一体化する感じ。それを味わうと、悩みとか、病気など、いろいろなことが全部リセットされる感じがあるのではないかと思います。一度体験してみて下さい。
—— 雅子さんが毎夏開いてらっしゃる遠州灘での砂浴をぜひ体験してみたくなります。
山口:ひと夏に7、8回は やっています。
—— 実際に参加者の募集もされていて、砂浴をいろんな方にも体験してもらおうということで活動されているのかなと思うのですけれども。
山口:私たちが仲間数人で細々と毎年毎年やっていたのをブログに載せていたら、「それって私も参加していいですか、どうしたらいいですか」と、自然発生的に来るようになったのです。それで、そんなにやりたい人、必要としている人がいるのであればということで日を決めて、募集するようにしたというのが正確な言い方かなと思います。
参加費はいただいていません。砂浴と称してお金を取っている人たちがいるらしいのですが、海は誰のものでもないので、お金を取る方がおかしいのではないかと思っています。やり方はお教えしますが、基本的に自分で掘って自分でかけて自分で埋まって、自己責任のもとに行う。「砂をかけて下さい」という感じで人任せだと、真の健康は得られないと感じています。
—— 何だかそこに大切なことがあるような気がします。
山口:自己責任とはちょっと違いますが、「自分の中に治す力がある」というのは、誰かの力にすがるとか誰かに治してもらおうではないと思う。それがわかると、どうでもよくなると言ったら変ですが、治る治らないが問題ではないのかなと。極端な言い方ですがそう思います。
—— 治るか治らないかはあくまで結果であり、それよりも自分のありようがどうなのか、そこを問うことの方が大切だとおっしゃっていると思うのですが。
山口:誰にでも平等に死はやってくる訳だから、今の病気を治したから幸せとか、勝者敗者の問題でもないという気がしています。それよりどうして病気になったのかということを振り返ると、何か必ず原因はあるはず。やっぱり病気って自分で作り出しているし、それで守られていたこともあるかもしれないですよね。自分でそれがわかった瞬間に何かがほどけていくんだと思うのです。
—— 病気になった理由の部分をほどいていく。それは自分でやるしかない。誰かがああですよこうですよと言うことではないということですね。
山口:砂浴がどうして良いかと言うと、何時間もかかる。入っているしかないから、ある意味委ねるしかないし、自分を見つめるしかないのです。
—— 手放す良い訓練というか・・・
山口:そうそう。
—— 現代人は忙しくて、なかなかそういうことできないですものね。
山口:時間をどう過ごすかというのは、人それぞれですが、そんな過ごし方もあるということかなと。
—— すごく心にしみるお話ですね。
山口:すごく面倒くさいんですよ。砂まみれになるし、砂浴のあとも大変なんだけれども、なぜかまたしたくなるんです。
—— それでもまたやろうと思う何かがそこにあるのですね。たかが砂浴、されど砂浴、やってみるとさらに奥深さがわかるのでしょうね。
山口:そう思います。
—— 聞けば聞くほどすごく私も惹かれます。今日はこうして皆さんに雅子さんの砂浴の話をシェアさせていただけて、とても嬉しいです。深いお話をありがとうございました。
(インタビュアー・長岡 純)

【イベント情報】
◆2月23日(日)
「環境と人にやさしい食と農について考えよう!
~災害時にも役立つエコ料理ミニ講座&試食会~」
(静岡県菊川市・牛渕公民館)
◆3月15日(日)
「災害時の食講座
~高密度ポリ袋で災害に負けない元気の出る料理とローリングストック講座~」
(神奈川県横浜市・新子安『しぇりる』)
◆5月28日(木)、6月14日(日)
「きくがわおんぱく~乾物を賢く使って、おひさまクッキング~(仮)」
(静岡県菊川市・アルモニー)