共育者に聴く

21世紀共育ラボでは、

共に育つということを実践されている方を「共育者」と呼び、

​その実践内容をインタビューさせていただくことにしています。

山口雅子さんインタビューvol.3




山口雅子(やまぐちまさこ)

岩手県宮古市出身、浜松市在住。ライター、環境と食のアドバイザー、ヒプノセラピスト。中医薬膳指導員、静岡県環境学習指導員。浜松市環境学習指導者。防災士。ふじのくに防災士。 著書/『そばをもう一枚』(静岡新聞社)、『静岡・山梨のうまい蕎麦83選』(幹書房)

ブログ「ヒプノセラピー&健康講座」 https://kenkokoza.hamazo.tv/


—— 私共のウェブサイト「21世紀共育ラボ」の運営母体でもある一般社団法人ちいさなありがとう基金では、昨年4月から「INORI桜プロジェクト」を主催しています。和紙で桜のちぎり絵を創っていただき、その実費を除いた収益金を主に発達しょうがいの子どもたちの支援に寄付しています。自作のチラシを雅子さんにお見せしたところ、「もっとこうしたら良くなるのでは」とアドバイスがあり、制作を申し出てくださいました。


山口:長岡さんと知り合ったのはだいぶ前になりますが、こういう活動をしていると知ったのは去年の初めだったでしょうか。素敵な活動だなと思いました。ただそのチラシを見た時に、分かりにくい(笑)。すごく熱い想いを感じるんだけれども、それが伝わるチラシになっていないのがもったいないと言うか、もどかしいと思って、ついついお節介で私がやると言っちゃったのね。


—— このプロジェクトのために力を貸していただき、お陰さまでチラシは格段に素晴らしいものになりました。ただ、新型コロナウイルス蔓延防止策から、浜松で予定していた催しを中止せざるを得なくなり残念でした。


山口:チラシ作成にあたっては、何度も長岡さんたちとやり取りする中で、ますますこのプロジェクトを人に伝えたいという思いを強くしました。そして、浜松の私の仲間も共感し、チラシの制作を手伝ってくれたり、イベントの計画に力を貸してくれたりしました。それだけに開催の中止はやむを得ない判断ですが、とても残念でした。


—— 雅子さんはコピーライターやフリーランスのライターなど、いろいろな経験を長年積んでこられて、執筆家として本の出版もなさっています。

また地元の情報誌に創刊(2017年)から発達しょうがいをテーマとした記事の編集にも関わっていらっしゃいますが、その経緯について教えてください。


山口:発達しょうがいについての記事は、最初のうち、施設やカウンセラーへの取材を重ねてきましたが、読者からお便りで感想や意見がどんどん寄せられるようになりました。

そこで発達しょうがいのお子さんを持つ親御さんからの声を聞き、座談会なども行って、できるだけ当事者の声を伝えるようにしています。


—— 発達しょうがいについて取り上げようと考えたのはどういったところからでしょう。もともと関心をお持ちだったのでしょうか。


山口:私が発達しょうがいについて関心を持ったのは、10年ほど前に、環境省環境カウンセラーの馬場利子先生の環境講座を受講したのがきっかけです。発達しょうがいを抱える子どもたちが近年どんどん増えているのに、周りの人が何も知らず理解を持たないという状況はおかしいと思ったからです。周りの理解と正しい対応、支援がなければ、不登校やいじめ、引きこもり、差別、いろいろなものを生み出していくと思いました。こうしたことを伝えるのは、それこそ地域に根差した情報誌の役割だと思ったからです。


—— そういう経緯があったのですね。そして、情報誌の発刊を機に、発達しょうがいの方々に焦点を合わせたページを設け、皆さんの抱えている問題、周囲を取り巻く環境を誠実に読者に伝えているのですね。


山口:それと、当事者の話が取り上げられている記事は当時少なかったんです。それではなかなか読者には響かないのではと思いました。


—— 実際の記事を拝見すると、相手の立場に立ち、気持ちに寄り添い取材されているのが伝わり、読者から共感されるのでは、と思いました。


山口:ありがとうございます。創刊当初は、実例は入れてありましたが、どちらかというと、専門的な立場からの解説という感じでした。それが、だんだん反響が出てきてからは、できるだけ当事者の声を拾って伝えるような記事の内容へと変化していきました。


—— 読者で思い当たることがある方も、「あ、そんなふうに私も考えればいいんだ」と、きっと共感され反響が広がっていったのでしょうね。


山口:そうだと思います。発達しょうがいと言ってもさまざまで、ケースバイケースであるにもかかわらず、一般の人はすべて同じだと思い込んでいるところがありますよね。もっとちゃんと知ってもらうためには、多くの当事者に直接話を聞く方がいいのではないかと試行錯誤しながら、今日のようなスタイルになりました。   ちょうど同じ頃、仕事でお世話になっている「はままつフラワーパーク」の塚本こなみ理事長からも、「発達しょうがいや引きこもりの子どもたちに、花やみどりを通して教育につなげたい」というお話を伺っていました。そして、「INORI桜プロジェクト」の話をしたところ、「それはとても意義のある素晴らしい活動ですね」と言っていただいたんです。


—— それは私たちにとっても励みになる嬉しい言葉です。塚本こなみさんと言えば、以前足利フラワーパークの園長をされていた方で、絶対に無理だと言われていた、フジを移植して再生させるということで高い評価を得ている方ですね。


山口:はい。そうです。


—— 植物がもたらす力をよくご存知で、植物が人を癒し、時には生きる力や背中を押してくれる力にもなることを熟知されている方と聞いています。


山口:こなみさんとのお付き合いは長いのですが、どこか考え方に通じるものがあると勝手に(笑)思っています。


—— 例えばどんなところですか?


山口:植物も人間も同じ生命を持ち、みな大事な存在であり愛おしい存在ですよね。

その生命を育む際、一人ひとりが持っている力を伸ばすという点で、植物も人も共通するところがあると、こなみさんはおっしゃっています。「木がちゃんと育って花を咲かせるには、まず根が大事なのよ」と。その見えない部分の根を育てるというのは、勝手に養分を与えるとかではなくて、やっぱり「手をかけ、心をかけ、時間をかけ」と。それは子育てとかにも通じるのではないでしょうか。


—— 育むという点で大事なところは、植物も人間も同じなんですね。

最後に、山口さんのこの仕事における根っこの部分についてお話を聞かせてください。


山口:根が大事と心底思えたきっかけは、私の病気と不妊治療です。10代から生理がきつく、20代で内膜症、子宮腺筋症となり、30代で子宮筋腫の手術をしました。新聞で「ダイオキシンが子宮内膜症、子宮筋腫の原因になっている」という記事を読み、化学物質、環境ホルモンと健康について調べたことも関係しています。環境講座を受けたあと私は、静岡県環境指導者の資格を取得し、声がかかると、環境ホルモンや食品添加物など化学物質と健康への影響について講座を開くようになりました。それでまた、こうした問題は妊婦や子どもへの影響が大きく、発達しょうがいの原因の一つにもなっていると知りました。

社会的問題であれば、社会に伝えていかなければ根本は変わりません。発達しょうがいの子どもたちの現状はどうなんだろう?親は?教育環境は?と、あまりに何も知らなかった自分に愕然とし、これはちゃんと調べて、当事者に話を聞き、伝えていかなくては、と思ったのです。それがジャーナリストとして、私ができる方法だと思いました。


—— 山口さんの根っこの部分に触れて、無理と思われることが肥やしとなり、樹木が見事に再生していく姿を重ねました。この3回の連載を通して、山口さんが、社会を、人を、愛おしみ育み、全身全霊で生きていらっしゃる姿を間近に感じさせていただき、私も背中を押してもらいました。ありがとうございました。


(インタビュアー・長岡 純)





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