共育者に聴く

21世紀共育ラボでは、

共に育つということを実践されている方を「共育者」と呼び、

​その実践内容をインタビューさせていただくことにしています。

山口雅子さんインタビューvol.2

最終更新: 3月1日

山口雅子さんへのインタビュー2回目は、自然料理・災害時の食について語っていただきました。



山口雅子(やまぐちまさこ) 岩手県宮古市出身、浜松市在住。ライター、環境と食のアドバイザー、ヒプノセラピスト。中医薬膳指導員、静岡県環境学習指導員。浜松市環境学習指導者。防災士。ふじのくに防災士。

著書/『そばをもう一枚』(静岡新聞社)、『静岡・山梨のうまい蕎麦83選』(幹書房) ブログ「ヒプノセラピー&健康講座」 

https://kenkokoza.hamazo.tv/


—— 山口雅子さんがたくさんお持ちになっている引き出しの一つに、災害時の食という調理方法がおありでその講習会もされています。災害もあちこちで起きているので、私たちが本当に知っておく必要のあることだなと思います。


山口:もともと体と心・食・環境は全部結びついていると思っていて、まずは自分の体を整えるために自然料理を始めました。勝手に自然料理という言い方をしているのですが、どういうことかというと、添加物を使わない食材を用い、体に悪いものをなるべく入れない。以前の私は人より気をつけていた方ではあっても、あまりにも無頓着だったと思ったのです。


—— 無頓着だと思ったきっかけは何かあったのですか?


山口:病気になった時に、私はものすごく体をいじめていたな、申し訳なかったなと思ったのです。言い方を変えると、体を大切にしていなかったと反省した訳です。東城百合子さんの『自然療法』という本は、私のバイブルなのですが、実は母からもらったものです。なのに全く見ていなかった。でも病気になって読み出したら、どんな医学の本よりもそれが素晴らしいと分かってきて、やっぱり「病気治しは自分治し」だと思い、まず料理に取り組みました。

料理はもともと好きだったのですけれども、いい食材をちゃんと使おうとした時、和食の知恵ってものすごく素晴らしいと思ったのです。例えば、日本には、発酵食があり、乾物があって、保存がきくものを添加物を使わずに日本人はちゃんと作っていたのです。醤油にしても味噌にしても酢にしても全部発酵の力ですよね。

味噌仕込むのも年に1回、ちゃんと一年間持つようにやっている訳です。お米だって乾物で、年1回収穫して保管している。梅干もそう。年に1度採れるものを漬けることで何年間も持っている。この素晴らしさにまず気がついて、そういう日本人の知恵がいっぱい詰まったものを伝えたいというのが最初で、防災食をやろうと思っていた訳ではなく、体にもいいし、環境にもいいし、エコでもあるということでやっていたのです。そうしたら東日本大震災が起こりました。

私は岩手県宮古市の出身で、実家は1m40cmの津波による浸水被害を受けて解体されました。宮古には叔父もいたし、友人も岩手県に大勢います。あの時は東京でも買い占めということで物がスーパーやコンビニから消えて、本当に必要な人の所に必要な物が行かないという状況にすごく胸が痛みました。その時に私は物を買わないと決めたのです。震災直後から何も買わずに私も被災地の人たちと同じに…

高密度ポリ袋に食材を入れます

—— 同じように生活しようと?


山口:とにかくあるもので暮らしてみようと決意したら、何も買わなくても1週間暮らせたのです。特に非常食を備えていた訳ではないけれど、何だ、暮らせるじゃないかと思って。それはどういうことかというと、普段から私はお味噌も梅干も自分で作るし、他にもさまざまな乾物や塩漬けのわかめなど何かしらある。あっ、もし皆がそのようにすれば、結構助かるのではないかなって思ったのです。


―― 災害時の食を作られるようになったきっかけですね。


山口 :それと、テレビを見ていたら、避難所でなぜか皆ダンボールの仕切りの中でじっとしているじゃないですか。どこかから配給されたパンやおにぎりを、ありがとうございますって小さくなって食べていたり、炊き出しだといって並んだりしていて、何か変だな、ちょっとおかしくないかと思ったのです。災害が起きたらそうするものとみんな思っているみたいですが、実際、家は大丈夫だということも多い訳です。すると物はあるはずです。でもライフラインが止まっている。だったら、どうしたらよいか、みんなで作ろうとか、そうならないのが不思議だったのね。


—— そうですね。言われてみれば。


山口:何というか、これまで普通に自立した生活をしていた人たちが被災したらいきなり恵んでもらう立場になって惨めな思いをする。何かしてあげたいと支援する側は逆に恵んであげるではないけど、上からの態度になってしまう。

救援物資が人数分ないから断ったとか、不公平だとか、そんなのもすごく変な話だし、私、嫌だった。せっかく日本人のいろいろな知恵があるのだから、家が無事ならば食材を持ち寄って、もうちょっと良い方法が何かあるだろうと思ったのが、災害時の食のきっかけなのです。

それと、東日本大震災のあとにボランティアでいろいろな所を廻った時、当時教頭をしていた先生から、家は高台にあり大丈夫だけれども、いきなりライフラインは全部止まり、テレビも映らず状況が掴めないまま、救援を待ってもずっと来なかったと聞かされました。不安ですよね。


—— 自力で生き抜くしかないですね。


山口:そう思います。そういうことがあって浜松では普段の食の講座で、まず皆で災害時の食事についてちょっと考えてみましょうとか、原発のことが心配だったので、放射能の毒を出すには味噌がいいとか、いろいろ皆で学び合ったりしているうちに、防災食・災害時の食について何かやってくれませんかという要望が出てきたのです。


—— どこから出てきたのですか?


山口:あちこちの自治体だったり、お母さん達のグループだったりです。私は浜松市と静岡県の環境学習指導者の資格も持っているのですが、エコな料理とかポリ袋ご飯の提案をしています。浜松市のホームページにも載っています。学校とかから申し込みがあれば、市から派遣されて授業をします。そういう要望も増えました。

ポリ袋ご飯というのは、検索すればいろいろなやり方で出てきますが、いかに時間をかけず、美味しく、衛生的に食べられるかという点に私の工夫が入っていると思うのです。


—— すごいですね。習ったことをただ教えるのではなく、必要に応じてご自身で考えていかれたのですね。


山口:ポリ袋ご飯についてはもっと効率の良いやり方があるのではないかと、何十回、何百回と繰り返すうちに、誰がやっても失敗しないやり方を考え出したのです。


—— 災害時には練習してからという訳にはいかないですからね。誰でもできないと役に立たない訳ですよね。


山口:そうです。書いてあるのを見てやってみても失敗するケースが多いんです。炊き上がった時に袋に穴が開いてしまい、お湯が入ってしまった、中身が出ちゃったとか、おかゆみたいにできたり、硬いのができたり…。どうしてかなと思っていました。私たちには容易なことでも、お米と水を入れたら袋の上をクルクルクルと巻いて輪っかにして、あとでパッと外れる仮の結び方、まずそのクルクルができない人がいることも知りました。また何人分もの量を一気にやろうとするとすごく時間がかかるのです。


水の入ったお鍋で温め調理します

—— でもビニール袋でご飯が炊けるのにはびっくりです。


山口:ビニールは塩ビのことなので、ビニールではなくてポリエチレン袋。100度以上に耐えられる高密度のポリ袋を使います。お鍋の底にお皿を一枚置くといいです。沸いてるお湯の中で袋がお鍋の底に直接触れてしまうと危険ですが100度に耐えられるポリ袋でさらにお皿一枚底にあれば絶対大丈夫です。


—— だから袋が溶けない訳ですね。


山口:ジプロックみたいなものは駄目です。透明でなく半透明のシャリシャリしたポリ袋ですね。私はそれにお米半合と水を入れて一人分おにぎりを作ることを提唱しています。どうしてかというと、災害時って不衛生で、夏だと食中毒の問題もあるし、贅沢に洗えるような環境ではありません。そんな時に一人ずつおにぎりが作れれば、素手で材料を触ることがないので衛生的なのです。


—— 袋に入れたまま握るのですね。いろいろと削ぎ落として合理的に考えられているのですね。


山口:それだと器はいらないし洗い物もない。おむすびならポリ袋から剥がれやすく、衛生的、それで美味しいです。もし残っても自分の物としてしまっておけます。私は、災害時であっても1日に1回は温かいものを食べましょうと推奨しています。


—— 素晴らしいですね。一回それを体験しておけば、いざという時にそこにあるものだけでできるということですね。自分で作って温かいものが食べられますしね。


山口:そうなのです。絶対役に立ちます。お米を洗わなくてもいいし、最小限の本当に炊くだけの水ですぐできます。究極、調理道具を使わずにポリ袋で煮物もできます。鯖缶とお麩と切り干し大根というのを私は子どもたちにも教えます。尤も(もっとも)ひじきは煮ないと食べられないと皆さん思っているけれど、実は一回炊いた物なので火を使わなくても食べられるし、切り干し大根も煮物でしか皆知らないけれども、煮なくても食べられます。食材を組み合わせながら今、講座で作るレシピは10種類以上ありますよ。


—— 防災食というと乾パンとかを想像しますけど、そういうものとはまた別で自分で作ることができるということなのですね。


山口:ローリング・ストックという言い方をするのですけど、日頃使う乾物や缶詰など保存がきく物を常に1週間分多く用意しておく。それを普段から使って作り慣れていると、いざという時に困らないですね。


—— 日本に古くからあるもの、自然の恵みを大切にする生き方、雅子さんが大事にされているものがこの防災食にも入っているように思います。昔から食べてきた普通のものが、災害の時も私たちの健康を維持していく力になってくれるということかと思います。


山口:出汁を取る際、インスタントのものを皆、使いますよね。「だし」をただ入れるだけ。実際は、サッと使える状態にしてくれた人がいるから私たちは簡単に出汁が取れるのであって、あそこまでにするにはものすごい苦労があるわけです。自然の恵み出汁、本当の旨味出汁ということを知ってほしくて、たとえ災害時でもインスタントではなく、昆布や干し椎茸そのものを使ってやっています。


—— 普段からそういうものを意識して食事に取り入れることができていれば、災害時でもできるし、体にもいいし、環境にもいいということですね。何かすごく考えさせられますね。普段自分が何を食べているのか、まずそこから見つめ直したい。

それから、雅子さんの「災害時の食」の講習を受けたい方はどうしたらいいですか?


山口:数人でも数十人でもいつでも要望に応じて開催します。


—— どこかに雅子さんが出かけて行って教えてくださるのですか。


山口:はい。10人程度であれば私一人で、学校や自治体など人数が多い場合は環境学習の仲間と一緒に行っています。


—— そうですか。ホームページを見れば、問い合わせできる訳ですね。


山口:はい。お問い合わせください。


—— ありがとうございます。


(インタビュアー・長岡 純)

エコ料理メニュー一例:

ひじきとコーンの和え物

ビーンズ入りポテトサラダ

切干大根と麩と鯖缶の煮物

トマト風味パスタ

簡単オムレツ

おにぎり(ポリ袋ご飯)

デザートにお麩トリュフ



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